在宅で介護したい!知っておきたい公的介護保険サービス
目次)
1. 親に介護が必要になったときに、自宅で介護保険サービスを利用する方法
2. 介護保険サービスの利用額と区分支給限度額
3. 在宅介護で乗り切るために必要なこと
以前、ママが老後を快適に過ごすための「介護のお金」について教えてもらってたよね。私たちも、いつかは介護問題に直面するだろうから、もう少し介護について知っておいた方がいいかなって思って。
関連記事:親の介護はある日突然に!介護の種類と費用を知っておこう
確かに、いざというときに慌てたら親を混乱させちゃうかもしれないしね。
2人とも偉いニャ!ところで、前回話した在宅介護と施設介護と大きく分けて2つあることは覚えてるかニャ?
う…うん。覚えてるよ。
怪しいけど、大丈夫ニャ!今回は在宅介護についてもう少し詳しく教えるニャン!
介護は突然やってくる場合と、じわじわとやってくる場合がある
介護には、
・脳梗塞やケガが原因でこれまでの生活ができなくなり突然要介護になるケース
・徐々に足腰が衰えたり認知症が進んで要介護になるケース
があります。特に、突然介護が必要になった場合は、どうしたらよいか、どこに相談したらよいかと戸惑います。「親御さんの居住地の地域包括支援センター」が頼りになりますので、どこにあるのか、連絡先を調べておくとよいでしょう。
「地域包括支援センター」とは、地域に暮らす要介護者やその家族の公的よろず相談窓口で、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーが常駐しているニャ!
親に介護が必要になったときに、自宅で介護保険サービスを利用する方法
親に介護が必要になってきたら、以下のような手順が必要になります。
親の心身の状態によるけど、親まかせにせず、はじめから子どもなど家族もかかわっていくと、要介護度の進捗度合いを把握でき、ケアマネジャーとの連携もスムーズにいくニャ!
在宅介護で使える介護保険サービスの代表は「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」の3つです。
■訪問介護
自宅に訪問介護士(ホームヘルパー)が来て、食事、排泄、入浴、着替えなどの身体介護、炊事、掃除、洗濯、買い物などの生活援助を行ってもらえるサービス。
■デイサービス
送迎付きでデイサ―ビスセンターや特別養護老人ホーム(通称:特養)に行き、食事、入浴などの介護を受け、体操やゲームなどをして皆さんと一緒に楽しむサービスです。デイサービスに行くことで自宅にこもらず、社会との接点を保ち、刺激を受け、メリハリのある生活を維持することができ、家族は自分の時間を作れます。
■ショートステイ
家族が忙しいときや出張で留守をするときなどに、数日間泊って介護を受けて過ごせるサービス。
その他、いろいろな介護保険サービスがありますが、看護師が来て医療ケアをしてもらえる「訪問看護」や、介護ベッドや車いすなどをレンタルできる「福祉用具貸与」はよく利用されています。
実際は人それぞれで必要なサービスは違うから、ケアマネジャーに必要なサービスをうまく組み合わせたケアプランを組んでもらうニャ。信頼できるケアマネジャーを選び、親やご家族が希望する介護サービスを適切に組み入れたケアプランを立ててもらうことが大切ニャ。
自宅で使える公的介護保険サービスの種類を把握しよう
在宅介護で利用できる代表的なサービスには、以下のようなものがあります。
■訪問サービス
・訪問介護(ホームヘルプサービス)
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
■通所サービス
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション(デイケア)
■短期入所サービス
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護
■その他
・福祉用具貸与
・特定福祉用具販売
・住宅改修
いろんなサービスがあるんだね。
家族の状況に合わせて使い分けることができるから、興味がある場合は調べてみると良いニャン!
介護保険サービスの利用額は?
いろんなサービスがあることは分かったけど実際どのくらいの費用がかかるの?
介護保険制度では、在宅介護の場合、1ヶ月に利用できる限度額が要介護度別に決められています。下記の「区分支給限度額」で金額の確認ができます。この範囲内で利用した場合は、かかった費用の1割・2割・3割の自己負担で済みます。この自己負担割合は所得に応じて決められています。家族の介護力が大きければ、利用するサービスは少なくて済みますが、要介護度が高く家族があまり介護できない状況では、区分支給限度額を超えて利用するケースもあります。
区分支給限度額を超えた超過分に関しては全額自己負担となるから、介護費用が一気に高くなるニャ!だから、在宅介護では「毎月いくらかかるか」は1人ひとり異なるニャ。
公益財団法人生命保険文化センターの調査では、介護費用の月額平均額は46,000円となっています。しかし、要介護度が高く所得の高い世帯の場合は月額14万円を超えるケース(※1)もあります。ケアマネジャーに上限金額いくらくらいという目安を伝えて、ケアプランを作成してもらいます。在宅介護における月額区分支給限度額(※2)は次の通りになります。
※1世帯における1ヶ月の自己負担額が一定額を超えた場合、「高額介護サービス費制度」を利用することで、それぞれの上限額を超過した金額が払い戻されます。高所得者世帯の最大支払額は140,100円です。
※2 区分支給限度額は全国一律ではなく8段階となっていて、上記の金額は基準値といわれる一番低額の地域の金額です。加算割合が一番高いのは東京23区などです。
実際にどのような介護サービスをどの程度利用したら月額費用はいくらくらいになるのか、前述の公益財団法人生命保険文化センターの「介護保障ガイド」(2021年7月改訂版)で取り上げられている例をもとに見てみるニャ。
要介護3のAさんの場合
妻と2人暮らし。脳梗塞で倒れ、右半身麻痺と言語障害がある。自宅で在宅サービスを利用しながら妻が介護、土日は娘が手伝いに来てくれることで、ケアプランを組んだ場合。
▼利用する介護保険サービス
A-1 週1回 1時間未満 看護師による血圧の測定と脳梗塞再発予防のための助言指導
A-2 週1回 40分 言語聴覚士による言語訓練
B訪問介護:週2回(1時間未満、排泄、食事の介助などの身体介助)
Cデイケア:週3回(6時間以上7時間未満)
・ショートステイ:月4日
・福祉用具貸与:車イスと介護用ベッド
※1 単独型施設(ユニット型個室)を使用した場合です。
※2 所得区分に応じて、料金の9~7割が給付されます。
よって、要介護3のAさんの自己負担額は以下になります。
※ ショートステイはユニット型個室を使用した場合の金額。
ショートステイの滞在費・食費(2,500円×4日)、デイケアの食費(550円×13回)は介護保険対象外で、全額自己負担です。
Aさんは1割負担なので、
・<支給限度額内のサービス利用>金額は、
「イ」の270,480円の1割の27,048円
・<高額介護サービス費による支給額>は、
これに該当しないため、払戻金額は0円
・<「ウ」支給限度額超過分のサービス利用>金額は、
「ア」のサービスの利用合計金額285,880円から、
「イ」の介護保険からの要介護3の支給限度額270,480円を引いた差額15,400円(10割負担)
・<介護保険対象外のサービス利用>金額は、
ショートステイ(ユニット型個室利用)4日分と、
デイケアの食事代13回分の合計17,150円(2,500円×4日+550円×13回=17.150円)で、全額自己負担
よって、Aさんの1ヶ月の自己負担額は、
上記4つの合計金額である59,598円となります。
うーん、なかなか複雑だね。でもこれだけ受ける介護サービスによって金額が変わるってことか〜。
その通りニャ。本人と家族の必要とする支援の選択によって、かかる費用は本当にさまざまニャン。
在宅介護で乗り切るためにはキーパーソンとなる家族が必要
上記の例にもありますように、在宅介護に適しているのは、キーパーソンとなる家族がいて、ある程度は介護ができる、不足分は介護サービスを使って乗り切っていけるような人です。訪問介護やデイサービス、福祉用具の貸与など、必要な介護サービスをうまく使っていくことがポイントです。
マネキン:兄弟姉妹などがいる場合は、LINEグループで連絡を取り合うなど意思疎通をスムーズに、協力し合いながら支えていくことで、親子全員が安心して介護生活を送ることができるニャ。
私の場合は妹ともちゃんと連携しておく必要があるね。
「介護離職は避けたい…」在宅介護に限界がきたら
最近だと介護離職っていう話題も聞くよね…?
できれば介護のために仕事を辞めるのは避けたいところニャン。
介護のために仕事を辞める人が年間約10万人います。仕事を辞めると収入は途絶え、将来の年金額も増えません。介護保険サービスとともに、育児・介護休業法に基づく介護休業(※1)、介護休暇(※2)という仕事と介護の両立支援制度を上手に使っていきましょう。また、介護のための所定労働の時間短縮措置による残業免除も可能ですので、事前に確認しておきましょう。
※1 介護休業制度は対象家族1人に付き3回まで、合計93日間取得でき、支給額は原則給料の67%。介護体制作りの準備期間として利用できます。
※2 介護休暇は1年に最大5日間、半日単位でも取得可。賃金は法的な定めはなく、各事業主に委ねられています。
在宅介護って、あくまでも家族が自宅で介護するのが基本で、不足分は介護保険サービスを使っていく形ってことだよね。介護や見守りをしていける家族がいないと結構難しそう…
要介護度が軽く認知症ではない場合は、家族が協力して介護に当たり、不足分は介護保険サービスを利用し、自宅での生活を続けられます。しかし、要介護度が進み、介護する時間が長くなってくると、家族の負担が重くなり、生活に支障をきたすようになってきます。そうなると、特養や有料老人ホームなどの施設入居も検討することになります。介護施設の場合は自宅と違い、介護費用だけでなく居住費(家賃や食費)もかかることから、月額費用が高額になります。
「家族が介護の時間を提供する」か、「介護費用を支払うことで介護をお願いする」か、の選択です。親本人も含め、家族全員で十分に話し合い、そのご家族にベストな道を模索しましょう。
だんだん介護が不安になってきたよ…。
まだわからない将来のことだから不安になるのは当然ニャ。だからこそ、今からいろんな選択を知って、いざというときに慌てない準備が必要ニャン!
在宅介護が難しくなったら施設介護に移行することも考えなきゃいけないってことだよね?
そうニャ!だから次回は「施設介護」に ついてお話しするニャ。マネ男もくよくよしてないでしっかり勉強するニャ!
そうだよね!いざというときは男の僕がしっかりしなきゃ…!
「男の僕が」なんて、そんな古いこと言ってないで、一緒に乗り越えて行きましょう!
マネ娘はたくましいニャ~。
執筆:岡本典子(ファイナンシャルプランナー)
FPリフレッシュ代表。シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルに特化した独立系ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。セミナー講師・講演や執筆、監修も行う。著書に『イザ!というとき困らないための 親の介護と自分の老後 ガイドブック』(ビジネス教育出版社)、『後悔しない 高齢者施設・住宅の選び方』(日本実業出版社)がある。