老後生活資金として注目されるリバースモーゲージは安全?基本からメリット、注意点まで徹底解説!
目次)
1.リバースモーゲージって?
2.リバースモーゲージのメリット・デメリット
2-1.メリット
2-2.デメリット
3. 利用条件やどんな人に向いているのか?
4.リバースモーゲージのシミュレーション
この前、昔お世話になった上司と会ったんだが、老後の生活費のために「リバースモーゲージ」を検討してると言ってたな。
最近CMやニュースでも見聞きするわ。自宅を担保にお金を借りる仕組みよね?
そうだな。ただ注意点もあるようで結構悩んでいたよ。マネキン、リバースモーゲージって実際どうなんだ?
リバースモーゲージは、ママの言う通り、自宅を担保に資金の借入を行って、借入人が死亡したときに担保である不動産を処分して借金を返済するんだニャ。
ただ、利用条件や注意点もあるから、詳しく教えるニャ!ぜひパパの上司の方にもおさえておいてほしいポイントがあるニャン。
1.リバースモーゲージって?
「リバースモーゲージ」と聞くと、耳慣れないこともあり、得体の知れない危険な金融商品と思われるかもしれません。実際のところ、万人にとって有用な資金調達方法だと断言できないのも事実です。
ただし、リバースモーゲージの仕組みを正しく理解し、自分にとってメリットがあると判断できれば、老後の生活を豊かにする選択肢の一つになります。
まずはリバースモーゲージの基本的な仕組みや特徴について解説するニャ。
リバースモーゲージを直訳すると、リバース(逆)モーゲージ(抵当)で「逆抵当」を意味します。抵当とは、担保の一種で、ローンなどを組んで金銭の借り入れをする際、借入先に対して約束事や物を担保として差し出す必要があります。
リバースモーゲージが逆抵当と言われる所以は、通常のローンに対して仕組みが異なるからです。
自宅を担保に入れるローンといえば、住宅ローンをイメージするけど、仕組みが違うのか。
住宅ローンは、住宅の取得に必要な金額を一括で借り入れ、毎月元本と利息を返済していくことで借入残高が減っていきます。
一方で、リバースモーゲージは、借り入れたお金を一括または分割で受け取るところからスタートします。
返済方法は、
・契約終了時(または死亡時)に元本・利息を一括で返済
・利息のみを毎月支払い、元本を契約終了時(または死亡時)に一括で返済
のいずれかで行うことになります。
つまり、通常のローンと異なり利息を含め借入残高は増えていく、かつ、契約終了時に一括で返済するため「リバース=逆」と表されているわけなんだニャ。
次に、リバースモーゲージの主な特徴について解説するニャン。
まず、リバースモーゲージは自宅を担保として差し出すものの、自宅を手放さず、今まで通り住み続けながら資金調達が可能です。
自宅が持ち家でなければ担保にはならないため、リバースモーゲージを利用することはできません。
また、リバースモーゲージには、
・自治体の社会福祉協議会などが窓口となる公的なリバースモーゲージ
・銀行など民間機関が扱う民間のリバースモーゲージ
の大きく2種類に分けられます。
公的なリバースモーゲージは、正式名称を「不動産担保型生活資金」と言い、国が低所得の高齢者世帯に向けて、使途を生活資金に限定して貸し付ける公的制度です。
一方、民間のリバースモーゲージは、金融機関などが提供する商品です。生活を豊かにするための資金として使途に制限はありません。
なお、利用機関によって、資金用途や申し込み可能年齢、借入額、借入金利、対象となる地域や担保物件、推定相続人の同意、など条件はさまざまニャ。
事前にしっかりと確認しておくことが重要ニャン!
リバースモーゲージと名称が似ている「リ・バース60」を見聞きしたことがあるけど、違いは何なのかしら?
「リ・バース60」は、住宅金融支援機構が提携金融機関を通して提供しているリバースモーゲージ型住宅ローンです。
つまり、自宅を担保にして借り入れをする点は同じものの、住宅ローンだから、使途は住宅に関するものに限られるニャ。
返済中の住宅ローン負担が重い、あるいは住み替えをしたいなど住宅関連資金が必要な場合はリ・バース60を、住宅関連資金に限定しない場合はリバースモーゲージを、とニーズに合わせて検討したいところです。
2.リバースモーゲージのメリット・デメリット
民間のリバースモーゲージは老後を豊かにするための資金調達が出来るローン商品であり、持ち家を保有していれば利用できそうなことは分かりました。ここでは、具体的なメリットとデメリットについて解説します。
メリット
①自宅に住み続けることができる
住み慣れた家に住み続けながら、自宅を担保にまとまった資金の借り入れができます。精神面でも金銭の不安が緩和されることでしょう。
②資金の使い道が自由
先述の通り、資金用途に制限はありません。自宅のリフォームや老人ホームへの入居一時金、あるいは旅行、子どもや孫を援助するための資金など、自由に使うことができます。
③毎月の返済負担が少ない
一般的に毎月の返済は利息のみで、元本部分については契約終了時(または死亡時)に一括で返済するため、毎月の返済負担は少なくて済みます。
④夫婦の場合は配偶者が契約を引き継げる
一般的には上述の通り「死亡時に一括返済」のルールではありますが、遺された配偶者がいる場合、自宅が無くなってしまったら大問題です。多くの利用機関では、そのまま契約を引き継ぐことが可能となっています。ただし、念のため、利用前に契約内容を確認しておきたいところです。
各家庭によってライフスタイルや何のお金が必要かはそれぞれだから、資金の使い道が自由なのはありがたいね。
デメリット
①融資限度額の下落リスクがある
そもそも融資限度額は、自宅の評価額の40%〜70%程度を上限とするなど利用機関のルールで決まります。さらに、自宅の評価額は年1回など定期的に見直しが行われるケースもあります。
地価の下落に伴い融資限度額が引き下げとなれば、限度額を超えた分の返済が必要となる可能性にも注意が必要ニャ!
②長生きリスクがある
長生きすると、自宅を手放さざるを得ない状況に陥る可能性があります。先述の通り、リバースモーゲージは契約終了時(または死亡時)に自宅を売却することで借入額を返済する仕組みです。
ただし、死亡するより前に、融資限度額に到達してしまう可能性もあります。その場合、自宅を明け渡すことや一括返済が必要になることも考えておく必要があります。
③将来の金利上昇のリスクがある
変動金利を採用している機関が多いことから、金利が上昇すると、毎月の利息支払額が増えて負担になることが考えられます。
なるほど。自宅を担保に融資を受けることで、まとまった資金を得ることができるし、月々の返済は少額で済む。
でも、最終的には自宅を売却しなければならないサービス、ということは念頭に置いて検討すべきね。
3.利用条件やどんな人に向いているのか?
リバースモーゲージを利用するには条件や審査があります。利用機関によって条件の詳細は異なりますが、おもな条件は以下の通りです。
・申し込み可能な年齢
利用する本人が、借入時に60歳以上80歳未満など、年齢制限があります。
・担保となる不動産
担保にできる不動産については、相応の評価が求められます。そのため、評価額が高い都市部などにエリアを限定しているケースもあります。
また、物件については、一般的に土地付き一戸建を対象としているケースが多いのですが、マンションが含まれることもあります。いずれにしても利用機関によって判断基準は異なります。
以上の条件をクリアできた場合、どんな人が利用するのが望ましいのか具体例についてもみておきましょう。
・生活費は足りているが、趣味や旅行にかけるお金が欲しい
・自宅のリフォーム、あるいは、気に入った物件があれば買い替えたい
・最後は老人ホームへの入居を考えている
・住宅ローンの返済負担を減らしたい
・自宅を誰かに遺す必要がない
・将来の相続で、相続人に自宅売却の負担をかけたくない
自分に当てはまるか、イメージできたのではないでしょうか。
4.リバースモーゲージのシミュレーション
さらに、実際にどのくらいの資金を調達できるのか、架空の人物・会社員田中さん(62歳)でシミュレーションしてみるニャ。
田中さんは、現在62歳の会社員です。60歳以降、継続雇用となり年収は半減、日々の生活費を賄うだけで手一杯です。そして、悩ましいのは、住宅ローンの残債が1,200万円ほどあることです。60歳で受け取った退職一時金で一括して繰上げ返済を考えたものの、手元資金を減らしても大丈夫か結論を出せずにいます。3年後に年金生活が始まることもあり、不安が増しています。そこでリバースモーゲージのシミュレーションを行いました。
・現在の住宅ローン
・当初、
融資額3,500万円、借入金利 固定3%、借入期間35年、毎月の返済額 約13万4,000円
・返済15年目に借り換え、
融資額2,400万円、借入金利 変動1.4%、借入期間20年、毎月の返済額 約11万4,000円
↓ ↓
現時点での残債 約1,200万円(ローン残存期間10年)
・リバースモーゲージ
融資額1,200万円、借入金利 変動2.95%(2023年1月度適用金利、 毎年3月・9月に見直し)、借入期間 終身
毎月の返済額 毎月約3万円
毎月の住宅ローン返済額が約11万4,000円だったのが、リバースモーゲージを利用した場合、返済額は約3万円と、毎月の返済額は1/3以下に軽減し、約84,000円(114,000円-30,000円)の生活費を作れます。
おー!返済額の負担を大きく減らせたね。
ただし、リバースモーゲージを利用するときには手数料がかかることも留意しておきましょう。今回のシミュレーション先の手数料は363,000円+実費ほどです。詳細は以下の通りです。
・利用手数料の内訳
165,000円(事務手数料として)
198,000円(不動産調査料として「融資金額1,200万円x1.65%」)
その他実費(登記費用、印紙税、振込手数料など)
なお、上記のシミュレーションはあくまでも一例です。利用機関や各個人の状況、担保となる不動産によって、試算結果は変わってきます。ひとことでリバースモーゲージといっても利用機関によって利用条件や提供サービスはさまざまです。
実際に自分の場合ではどうなるかを知りたい場合、まずは自宅のエリアを対象にしている取り扱い機関があるかを調べるところから始めると良いニャ。
また、住宅関連資金に限定して検討する場合、リ・バース60の選択も一考です。取り扱う金融機関は全国に点在しています。(参考サイト:リ・バース60取扱金融機関)気になる機関が見つかったら、相談してみましょう。
リバースモーゲージは、自宅(持ち家)があれば、それを担保にすることで融資を受けられる、老後資金に不安がある人には心強い選択肢の一つなんだな。
上司にも今回の話を共有するよ!
そうニャ。ただ前述の通り、あまり馴染みがない仕組みでもあって、大きなお金が動くことにもなるから、まずは納得できるまで相談を受けてもらえる機関を利用することをオススメするニャン。
私たちも、この家をどうするかも含めて、老後のことはきちんと考えていかなきゃね。
そうだなぁ。この家はママとの思い出がいっぱいだから、売却して手離すことを考えるだけで、うぅ…(泣)
もうパパったら、大袈裟なんだから。
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プレ定年専門FP®️公的保険アドバイザー、相続診断士子供の小学校入学を機に保険代理店でパート開始し、FP資格を取得。現在は、定年後の生活設計を専門とするプレ定年FPとして50代会社員に特化した個別相談、執筆を中心に活動。書籍『書けば貯まる! 今から始める自分にピッタリな老後のお金の作り方』。
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